編む植物図鑑 2

イグサ科~イラクサ科

イグサ科;Juncaceae

■Juncus acutus

イタリア、アメリカでかごの素材。マットなどを作る。
古代エジプトでかごの素材として使われた。
American Indian BaskeryでMasonが南東カリフォルニアの部族がコイリングのかごのパターンの材にすると書いている。p.30


■Juncus effusus var. decipiens

イグサ。広く温帯に分布。日本では(俗称 燈心草)茎の髄をろうそくの芯の素材としたが、ヨーロッパでも同様に使われた。
茎で畳表、笠、帽子、かごなどの編み組み品や瓶のカバーを作る。また、三つ組や縄にして結ぶ材にした。畳表の材料にはカヤツリグサ科の七島藺も使われる。
■編み組みの例:畳表、編み笠(青森県尾花沢地方、広島県など)、円座、深編笠、縄暖簾た(高崎暖簾など。
★素材ノート★ 畳屋さんから切り落としの畳表をもらえることもある。経糸を切り、霧吹きで水分を与え、イグサがまっすぐになるまで待つ。イグサを編む時は、少し霧吹きで水を与えて柔らかくする。 水分は大敵。カビが生えやすいので水分が残っている時の管理に注意。
●資料●和蝋燭の芯の作り方: 松井の本和蝋燭 http://www.mis.ne.jp/~matsui-1/index.html
●イグサの織機、製品コレクションなど:早島町町立歴史民俗資料館(岡山県)


イグサ縄


■Juncus maritimus

スペイン、モロッコなどでマット、敷物などを作る。


■Juncus Textilis

カリフォルニア。かごにその茎を使う。アメリカインディアンがかごに使ってきた。
■映像資料:Youtube, Juncus an ideal basket plant:かごを作る作業前の採取の方法、使い方、裂き方など。2020.4.20更新


■イチイ科 Taxaceae

■Taxus cuspidata

イチイ。高木になるようだが、生垣に使っている例が多い。一位とも書く。 木部を工芸品、彫刻の材料に利用。 ヘギ材にして利用される例は笠。 イチイ笠(岐阜県高山市一之宮): ヒノキのへぎ材と合わせて宮笠を作る。イチイの材は茶色なのでアクセントに。 ■資料:下記の飛騨高山in 一之宮のウエブサイトでは傘を編む作業とイチイの飾りを付ける所が見られる。2017.1.18 http://hidamiya.com/product/product02

一之宮のヒノキの笠:
中央ノ色の違う材がイチイ


■Torreya californicum

V.K.Chesnut(1902)によると根を裂いた材をカリフォルニアのMendocino countryのPomo族が時々かごに使うとある。木部の柔軟性についても触れている。


■イネ科Poaceae

■Ampelodesmos mauritanicus

地中海沿岸の地方、イタリアなど。収穫したら叩いて柔らかくして、縄をなったり、ブレイドを編んでそれをつないでかごにする。


■Andropogon gayanus

生育地アフリカなど。稈を利用する。太く長いので、屋根材などに使う。


■Andropogon pseudapricus

地方:アフリカ ウシクサ属の草の長い稈(茎)を使ってかごなどを作る。(ブルキナファソなど)


■Arundinaria tecta

river caneと呼ぶ。ネイティブアメリカンのかごの素材。稈を割ってへぎ材にし、組のかごの素材にする。


■ダンチク;Arundo donax

かご類、帽子などの材になる(日本など)。スペインで竹のように稈を割ってかごを作る。
★素材ノート:分岐が少ない若い材を割ったものが写真。タケ類と同様、外側を薄くして材にする。


■Chrysopogon zizanioides

ベチベルグラス。根の香りを利用する。また根をシート状にして団扇にする。(フィリッピンなど
写真の団扇の生産国は不明、根のシートを縫い留めて団扇にしている。



■Desmostrachya bipinnata

コイリングの素材、縄をなった。


■Denochloa scandens

生育地:東アジア。稈をかごに使う。葉は笹のよう、稈はツル性。


■Digitaria ciliaris

メヒシバ。9月ごろ花軸を抜く。あまり長くはとれなく、途中で切れてしまうものもある。しかし、穂から種を取り、穂と花軸を一緒によれば面白いテキスチャーの縄ができる。


■Eleusine spp.

アフリカで食料として利用。日本では数種があり、よく知られるのはオヒシバ。9月頃、花茎を抜いて縄にできる。写真は相模原で、種小名は不明。



■Leymus mollis

テンキ草と呼ばれる。北方先住民族(アイヌ)が葉や茎を使って巻き上げや捩り編みのかごを編んだ。 ■URL資料:テンキ、国立民族学博物館「アイヌ伝統文化資料の紹介」:http://www.frpac.or.jp/clt/mp-c-0005.htm ■資料:Leymus mollis : Aluetがかごを作る材料。beach rye grassと呼んでいる。


■カゼクサ;Eragrostis ferruginea

ミチシバとも呼ぶ。茎が長く編みやすい。


■Eragrostis curvula (Schrad.) Nees

/シダレスズメガヤ。スズメガヤ属の中で長い茎なので編む植物として利用できる。 葉は乾燥すると細くなる。茎の元の方に節があるが、細い茎のため、 少し叩けば柔らかくなる。 左は夏に刈り取って乾燥したものをもらった。外来種。 種が小さく量が多いので繁茂する 。


■Festuca spp.

ウシノケグサ属 多くの種がありどこにでもある。特に葉が長くなる種の葉を建築資材やロープにする。エチオピアの中央高原地帯では多種の自然資源を守る社会システムがあり、Festuca属の植物もその中に入る。日本にも帰化植物として入っているが、それほど高く成長する種は無いと思われる。
■資料:Fibras Vivas(ボリビアの植物利用など)では■Festuca dissitiflora、Festuca hypsophyllaのかごが掲載されている。


■Gynerium sagittatum

生育地:南米など。葉の中央の軸を使い、薄さを均等に削り、染色をしてブレイドを編んで、そのブレイドをミシンで繋げて帽子、sombrero vueltiaoにする。(コロンビア)


■Hierochloe odorata

スイート グラス(Sweet grass)ネイティブアメリカンの素材。 いい匂いがする。
北アメリカ ネイティブ(Ojibwe、Winnebago)が草の茎をかごに使う。


■Paspalum spp.

スズメノヒエなど。9月頃、花軸を抜くと50㎝ぐらいの長さに抜けるので縄になえる。全部が抜けるわけではないが。


■麦(総称)Triticum(コムギ属) Hordeum(オオムギ属)

●資料● 麦稈細工:いろいろな方法があるが、編んだ紐(麦稈真田紐)でバッグ、帽子などを作った。屋根を葺く材。


■Hordeum vulgare ハダカムギ


●資料:Baskets of the world the social significance of plaited crafts, p669 北東ポルトガル。別の種類の地元のバスケットはescrinhoと呼ばれ、rye麦(Triticum aestivum L.)の茎、時には大麦barley(Hordeum vulgare L.)でできている。
東京都大田区立郷土博物館の大森麦わら細工の会の説明パネルには麦わら細工の材料にハダカムギを育て、使っておられることが書かれている。


■チガヤ;Imperata cylindrica

穂や葉を編み材、縄を作る。 古代エジプトではかごの素材となり、フィリッピンやマレーシアではcogon草と呼ばれ、紙の原料になる。 トウヅルモドキを巻き材にしてチガヤを束にした芯を巻いてかごを作る。(沖縄)
★素材ノート:穂のついた茎ごと抜いて集める。穂をとじこめるようにコイリングでかごを作れば、毛皮のような?かごができます。


■Lygeum Spartum

espartoとも呼ばれるが、本来はStipa Tenacissimaのこと、これはFalse esparto grassと呼ぶが、編みに使われかごが作られる。


■ススキ, Miscanthus sinensis

茎、稈を使う。 土壁の代わりに使って家の外壁をふく。(秋山郷) 巻き上げ編みの芯材:(例)沖縄の鍋の蓋「カマンタ」


■Muhlenbergia filipes

スイート グラス(sweet grass) と呼ばれる。(同じ呼び名の違う植物がある。)
北アメリカでの使用例: 茎を水に浸けて腐らせ、繊維をとり、ロープ、粗布、袋を織る。紙もすく。日本のイネ科のネズミガヤに近いと思われる。切った時に香りがするので、この名がついた。 かごの例:アメリカ、South Carolinaのlow countryに住むAfrican-American の先祖達が奴隷として、アメリカに連れてこられ、以前に作っていたかごの方法で作り出したのが最初。スウイートグラスを束にして、palmettoの葉を裂いた物を巻き材にしてコイリングのかごを作る。今でもかごは作られているらしく、この地域の名産になっている。


Muhlenbergia spp.

インドで茎の他、根も使い箒を作る。(資料:Natural fibers handbook with cultivation & uses)


■Muhlenbergia rigens

北米インディアンのCahuilla族のかごの素材(資料:Ethonography of the Cahuilla Indians by A. L. Kroeber, 1908)


■イネ Oryza sativa

茎、及び葉を乾燥させて藁にし、または生のままでいろいろな編み組み品を作る。 筵、衣装(ブラジル)、ブラシ(ベトナム) かご、筵、着る物、笠、くつ、建材、縄、生活用品、飾り物など(韓国、日本など)

★素材ノート★『藁縄』 園芸店でも取り扱っている。あまり質のよくないものもあるが、編みに使うことができる。 縄は、コイル状に巻いて売っているのと、小量の縄にまとめて売っているようだ。縄は各種荷縄に利用、暖簾もつくられている。

ワラ縄

★素材ノート:準備について
藁からなう時には、製品に合わせた縄目、ミゴを抜くかどうかを決めておく。水に浸けてしばらくおき、藁打ち後、なう。しばらく綯っては、縄をしごくのを繰り返し、丈夫な縄を作る。 藁材はよく乾燥させないとカビが生えので注意。


★素材ノート 『ワラ打ち』 故柳田利中さんのワラ打ちの様子です。前夜に水につけて置いておき、その後、乾いたら霧吹きなどで水分を含ませ、全体をまんべんなく叩きます。木槌は重く、手が疲れますが、柳田さんのワラ打ちの音は軽くリズミカルに聞こえます。ワラの束を回しながら、全体を叩きますが、ワラの先の方を叩くときは、力をいれず軽く叩いているようです。稈を潰すのではなく、柔らかくするために叩きます。
叩くという作業は他の繊維植物にもよく使われています。

ワラ縄


★素材ノート 「ミゴ」 ミゴというのは藁の穂の稈です。藁1本に1本あります。 縄をなう時にはミゴが固いために、前もって取り除くこともあります。
ミゴだけを用いて作られるもの、例えばミゴほうき、前掛けなどがそうです。ミゴが編み材として使い、箱型のかごを作る方法があります。同じような形のかごを俵などを編む道具を使う方法でも作ることができます。
写真はかごの底の編みはじめの部分ですが、稈の束をミゴ2本で編んでいきます。ミゴは短いですから、当然継がなければならないのですが、その際、テンションが緩み、タテ材を押さえられなくなります。そこが難しい。ので、ミゴの代用に麻紐などが使われます。


●白旗八幡大神の藁の蛇 川崎市宮前区にある神社の鳥居に掲げられた蛇です。 目は八つ頭、下は人参、角はゴボウです。 胴はイネの稈をさしたものを竹に巻きつけているようです。 よく見ると螺旋状になっています。氏子のみなさんのご苦労と 情熱がなければ続けられません。これだけ作るのはたいへんだった だろう、と思います。どうなっているのか、面白そうです。 (2013.3月)
■資料:伝統「藁荷造り」について、宮木慧子さんの論文に縄や藁材を使った例の報告がある。2017.1.20 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/54/0/54_0_D13/_pdf


■Panicum maximum

「ギニアキビ、bolga basketの素材の一つ」(引用:アフリカの繊維植物とその利用,JAICAF)■動画資料:Making Bolga Baskets in Ghana(YOUTUBE);茎を割いて縄にしているところが見れる。


■チカラシバ:Pennisetum alopecuroidesm

多年草。茎の繊維が強いので、編むのに適している。ぞうりなど。葉の繊維が強く、編めます。子供のころ、この葉を結んで罠をしかけた人もいるかもしれません。


■Pennisetum purpureum

茎で帽子、かごを編む。Bolga basketの素材の一つ。(ガーナ)


■Pennisetum sphacelatum

地域:東アフリカ。例:エチオピアの篩の素材。2012年国立民俗博物館で行われていた「世界の織機と織物」展で篩のプロセスの展示があった。素材は上記のものとは記載はなかったが、同じイネ科の稈を使い、捩り編みで作られる。 以前に同じような作り方のエジプトの篩を見たときにどうやって、編んだ部分を取り付けるのか、あるいは編むのかが不明であった。同展の展示では枝に予め順番に固定した編み材でもじっていた。最終的に古いの形にするのには縁をコイリングするのだが、できた編みの部分を篩の形に合わせて切っていた。これで謎がとけました。 エジプトの篩はタテ材2本一緒に捩って、毎段ごとにずらしている。


■Phragmites spp. 

P. australisの生育地は世界中、一部の地域を除く。南イラクの湿地帯でMarsh arabsが浮島や建物を作る。大きな集会場のような建物はMudhifと呼ばれる。
■資料→画像検索キーワード「Mudhif」


■ヨシ;Phragmites communis

多年生草本。ヨシと呼ばれる。葉、稈などを使い、いろいろな物やかごを作った。屋根を葺いたり、壁の素材にも使われている。 日本では、屋根・壁材、簾、楽器などを作り、その繊維を利用する。稈を丸のまま使ってヨコ材にするか、稈を叩き潰して平らにして織りの方法で編む方法がある。 風除け「カザテ」(柏崎)よしず、ヨシ紙(滋賀県)、屋根を葺く材としては藁材より強く高級素材である。(例:宮城県)
写真は滋賀県で乾燥している所。
参考図書:ヨシの文化史 西川嘉廣著 サンライズ出版


■サトウキビ;Saccharum officinarum

しぼりカスのバガスが紙料パルプとなる。この中には繊維があり利用できる。


■Sorghum bicor var. hoki `Tama-sudare`

ホウキモロコシ。 分岐した稈を使い座敷ほうきを作る。
鹿沼では箒作りで出た茎を利用して「きびがら細工」が作られている。箒を作る方法、つまり茎を束ねる方法をうまく使って十二支が作られている。
○2010年、武蔵野美術大学民俗資料室が企画した「強靭な素材、柔軟な思考」展で、上記の十二支のうち、蛇を展示に使ったが、蛇のとぐろを巻いたところや、赤い舌が口から出ている(実は巻いてきた糸?)など、小さいものながら迫力満点。
■資料:ガーナのかごで、Sorghum bicolorの稈をかごの底に十字に重ね、繊維で編んで固定し、そのまま側面に立ち上げて、外側に水平材を渡して編むかごの素材になると書いている。(アフリカの繊維植物とその利用、JAICAF,2010)ただし、このかごの素材はイネ科ウシクサ属の稈であるという別の報告がある。(川田順三 1995)

写真はこの稈、ほうきにする穂を切ったもの。これを素材にいろいろな動物の形に編んだ伝統的なきび細工がある。それが下の写真。稈は水につけると柔らかくなる。作ってみてわがったが、ものすごく、よく考えられている。特に頭、なかなかうまくいきませんでした。左は実をつけた箒。ずいぶん前に買ったものだが、普通の箒と違い実にどういう役目があるのか、わからない。


■Sorghum vulgare var. technicum

milletの稈で箒を作る。 ■URL資料:オーストラリアのJohn Wrightさんの箒作りを自然とともに紹介、John Wright and art of making brooms: http://www.abc.net.au/local/videos/2011/11/08/3359452.htm 2017.1.20


■Stipa Tenacissima

(Macrochloa Tenacissima の記述もある。)呼称:エスパルト、アフリカハネガヤとも呼ぶ。英語名はesparto。イギリス、ヨーロッパで紙の原材料に使用した。かごを編んだり、ゴザの材料にする。(北西アフリカ、南部スペイン原産)。英名:alfa  イベリア半島でエスパルトの茎をそのままか、叩くことでいろいろな物を作った。束にした材で編んだ帯状のものはかごや、他のいろいろな物を作る素材になった。かごに仕立てる場合は、帯を繋げて底から編み、そのまま持ち手まで続いて繋げる所が興味深い。乳製品の製造やオイルの製造など、数種の編み方で生活に使う道具やおもちゃ、飾り物を作った。細く三つ編みにした材は、縫い糸のように多用された。 S.Tenacissima の他、数種使われるが、質が劣るものもある。 書籍資料:Cesteria tradicional Iberica:イベリア半島でのかご作りについて、植物の採取や加工方法についても詳しく記述がある。この地域には他の数種の植物とともに、文化を代表するもので、いろいろな編み方があり、他の繊維植物にもその編み方が適用されたとの言及がある。


■カルカヤ;Themeda triandra var. japonica

多年草根株を束ねたタワシが作られる。カルカヤにはオガルカヤ、とメガルカヤがある。タワシはどちらを使うかは不明


■Vetiveria nigritana: Chrysopogon(オキナワミチシバ属)

地方:セネガル vetiverと呼ばれ、屋根を覆う材として、またその茎と葉で帽子などを作る。 ●資料●VETIVERIA NIGRITANA and its use in Senegal。 アフリカで編組品を作る素材。 ブルキナ・ファソ、セネガルなど。屋根を葺く材や帽子やかごの編組品に使われる。


■トウモロコシ:Zea(トウモロコシ属)

実を包む皮をそのまま、または乾燥させて編む素材にする。 人形、かご、マット類などを作るが、葉を撚りながら編むが、予め葉を撚ったロープが売られていて、それを使った製品もある。 スーパーで売っているトウモロコシの皮を緑色のうちに剥ぎ取り、乾燥。カビやすいので気を付ける。使うときは少しの水を吹きかけるだけで十分。縄もなえる。


■Zea mays

トウモロコシ属の一つ。亜種がある。Maizeと呼ばれ主に食用だが、茎やハスクの繊維から紙が作れた。かごにはハスクを使う。
★素材ノート:ハスク(鞘)はスーパーで売っている鞘つきのトウモロコシから集めることができる。外側は固いが、内側の柔らかい鞘を乾燥し、割いて編み材にする。使う前は霧吹きなどで湿らせる。湿気が残ると、カビが生えやすく、虫も好むので保存の際には注意。、世界中で人形なども作られ、かごの材になる。


■マコモ, Zizania: Zizania(マコモ属)

■日本:葉を編み材に、茎を使って盆行事に飾る物を作る。他にもいろいろなものが作られる。
例:蓑等。
■資料:民具マンスリー30(9)「マコモ茂る水辺ー利根川下流域のマコモ細工」吉越笑子著
■北アメリカ:食料の他、葉を使ってマットを編む。


イネ科タケ亜科

Arundinaria spp.

北アメリカ。数種のアメリカインディアンの部族が稈を割ってかごを編む。なかでもルイジアナのインディアンは色を染めた材を使って複雑なパターンや二重のかごを編む。 資料:Sovereign nation of the Chitimacha(Chitimacha族のサイト。動画があり、材を採集して編んでいるところがビデオで見られる。) http://www.chitimacha.gov/


■Bambusa 属

生育地:東南アジアなど 建築、かごの材


■ホウライチク;Bambusa multiplex Raeuschel ex ex JA et JH Schult

(Bambusa nana Roxb. var. normalis Makino) 東南アジア、沖縄


■カンチク; Chimonobambusa marmorea

稈を割らずにそのままかごにする。かごの編み方はオカメザサのかごとほぼ同じで、細めの材を数本ずつ引き揃えて使っているところも同じだが、オカメササのかごと違い、途中で継いで編んでいる箇所がある。
栃木県の伝統工芸に指定されている。生垣にする地方もある。


■Dendrocalomus属

生育地:東南アジア、中国、インド、アフリカ、オーストラリアなど。 巨大な稈を建築、器などに利用。かごの材


■Dendrocalomus latifflorus Munro

マチク;生育地:東南アジア、日本では沖縄など。



■Gigantochloa属

生育地:東南アジアなど パイプ、建築材、垣根の壁材、楽器などの工芸品


■Oxytenanthera abyssinica

生育地:アフリカ。稈を割ってかごを作る。大型の竹で9mの高さになる。
■資料:Plants of the world online by Kew Science


■Phyllostachys bambusoides f. kashirodake

カシロタケ;九州に生育する竹
竹皮:群馬県前橋の前島美江さん(竹皮編み作家)巻き上げ編みのかごを作る素材に使っている。


■Phyllostachys bambusoides

マダケ;質的に柔らかく、細かい細工に向く。かご類、生活用品、飾り物、蛇籠。
マダケの皮:ぞうり、被り物(皮を糸でとめた笠など)
■資料:うなぎもじり(静岡県)(写真はその素材)
★竹縄(タカナワ)について 若い竹を切り、油抜きをして細かく割る。薄くへぎ、よりをかけが縄をなう。ハチクなども使う。 秩父の竹縄の記録が民俗文化映像研究所で記録映画になっている。


■Phyllostachys edulis

モウソウチク;


■ハチク;Phyllostachys nigra var. henonis

マダケよりは硬い。(これに関してはマダケの方が固いという方もいる。)茶筅を作る。 青い表皮を削って、1mm厚ぐらいで作る。 マダケと比べて稈が白っぽい。節の間が短い。各地でかごが作られる。例えば佐世保では野田利治さんが独特の浅いかごを、また静岡の線筋細工にもこの竹が使われる。


■アズマネザサ;Pleioblastus chino Makino

日本に自生していた笹類の一つ。縄文時代のかごの素材と考えられている。八王子にはこの素材で作る伝統的なかご、メカイの技術保存会が活動をしている。このメカイの場合は稈の直径が1,5㎝前後の細いものから材を取り、六つ目編み などを組む。

この他、宮城県岩出山でかごが作られている。両方とも細い稈から材を得ている。日本に自生していた笹類の一つ。縄文時代のかごの素材と考えられている。八王子にはこの素材で作る伝統的なかご、メカイの技術保存会が活動をしている。このメカイの場合は稈の直径が1,5㎝前後の細いものから材を取り、六つ目編み などを組む。
この他、宮城県岩出山でかごが作られている。両方とも細い稈から材を得ている。。

写真は0.6mm厚みで組んでみたあじろ編み。まだ隙間があいてしまう。この後、やり直して材にもどし、さらに木部を取った。写真は外の皮から木部を取る様子。一度木部と皮の間に刃物を入れると自然に刃が入り、手で 引くと、はがれる。私は熟練者ではないのでこの時点で厚さが1mm。これからもう一枚 木部をはぐと、厚みが0.5mm以下、0.4mmぐらいになる。つまり木部はぜんぜん無いといっていいぐらい。



■メダケ;Pleioblastus Simonii (Carr.) Nakai


■オカメザサ;Shibataea kumasaca 

日本特産の竹とある。 植栽ができ、節が高く、稈が丈夫なことから、かご作りに使われる。 稈をそのまま用いて、青いまま編むかごがある。写真は埼玉県秩父郡吉田町で2001年3月に撮影したもの。使うのは新しいものを選んで使うが、同じオカメザサでも生える場所や採る時期で弾力が違ってくる。中には容易に折れるものもある。

写真は秩父の吉田町で行われたオカメザサのかご作り教室でみたかご。現在も行われているかは不明だが、この時は近くのオカメザサを採集し、一年物などの稈をそのまま使って編む。 かごを作る工程は、底を編み、タテ材の端を大きくまわして、縁を作る。最初に太い根元側と細い先を順番に並べ、縁をまわした時に太い根元の方が外にくるようにしておく。最後に縁をしめて形を作るが、この作業がむつかしい! オカメザサは、割らずにそのまま、曲げて編むので、体力勝負。始終、材料を足で押さえて固定して、まるで柔軟体操のような格好で縁まで編んでいくことになる。


■クマザサ;Sasa veitchii Makino Shibata

葉を使って屋根、壁をふく(先住民族、北海道) 葉の繊維を混ぜて紙を漉き、紙布を織る。 <参考>ササワシ(イトイテキスタイル)ホームページ http://www.sasawashi.com/background/index.html


■スズタケ:Sasa borealis (Hack.) Makino et Shibata Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai

買い物籠、行李、文庫、弁当入れ(信州中央のミスズ竹細工など)、敷物。産地は下記の静岡県、岩手県の鳥越は長く続いている。マダケなど他の竹類の稈を利用して補強する。 ☆松本の旧開智学校の部屋には現場で職人が編んだ、部屋の床を敷き詰めた敷物を見ることができる。 ☆2017年に全国で一斉に開花した。 ☆ウエブ資料:松本の伝統工芸みすず細工、新まつもと物語、市民記者ブログ

★素材ノート★
写真は河口湖の保存会の方が作った米あげざる。 スズタケは富士山の麓に生えているものを採取するとのことです。 底の1組のタテ材は3本ずつ、(2本ずつの所もあります。)であじろに組まれています。その周りを3本ずつ、編み材が7周ほど入ります。この7周で完全に丸い底になるように角付近の両側のタテ材をよせて放射状にしています。その後はざる編みですが、中心から均一に拡がった放射状のタテ材を並べる技術の誕生には、竹のような薄いへぎ材が大きく関わっていると思います。


■チシマザサ(ネマガリタケ):Sasa kurilensis

かご、ざる類を作る。酒屋かご(雄国地方)、はけご


ヤダケ:Pseudosasa japonica

かご、ざる類を編む。


■シノ(俗名)

各地にシノダケ、と呼ばれる竹笹類がある。シノは俗名であって種類ではない。たいていはアズマネザサなど。かごが作られる


イラクサ科

■Boehmeria japonica

ヤブマオ。生育地:日本、中国、韓国など。茎から繊維を削り取って縄や織糸にする。


■Boehmeria nivea

Boehmeria属の植物には茎に繊維があり、外皮ごと剥くことで簡単に採取できる。意外にも近くに生えているのに気がつくだろう。繊維が長いか、丈夫かは種類にもよるが、生えている場所も大切な要因になる。

B.niveaには上記の他にも多くのバリエーションがある。その中でも栽培に値する種類からカラムシ(からむし)、苧麻、ラミーと呼ばれる繊維が収穫され、テキスタイルに利用される。この繊維は中国、韓国でも収穫される。韓国でのラミーの種類については次の報告書を読むとわかりやすい。

ウエヴ資料:Morphological difference between ramie and hemp by Min Sun Hwang, 2010
■書籍資料:野生カラムシの伝承、脇田雅彦・節子著、染織アルファ―№187

福島県の昭和村ではからむし織といって県の無形文化財に指定し、力を入れている。中国、韓国、東南アジアなどでも栽培され、布や編み組み品、工芸品が作られている。布の利用例はアンギン。カラムシでタテ糸を作った。 また、バスケタリーでは皮がついたままの繊維を編みこんだかごを作っているのを見た。(福島県三島町) 写真は福島県大沼郡昭和村で畑で栽培されている様子。まっすぐで長い繊維をとるために、畑の周りに囲い(右端に見えているむしろがそれ)をして草を守る。書籍資料:植物民俗、長澤武著、ものと人間の文化史101、p.104-(カラムシの栽培、採取についての記述がある。)




★素材ノート1 Boehmeria niveaの仲間を畑で育てていた。葉の裏が白いもの。私が育てる目的は編む材料なので、年に4回ぐらい外皮ごとの繊維を収穫していた。畑や庭でも育てることができるが、地下茎が伸び、生育が旺盛で広がり、いろいろな所から出るので管理の必要がある。

★写真は苧麻の繊維。細い繊維を指にかけて巻いてこの形にする。韓国製。細い繊維は1本で繋げられている。そのつなげ方が巧妙である。新しい材と短くなった材の端どうしをよりあわせ、繋げる新しい材をUターンして、撚った材の上に撚り合わせる。これで、引っ張っても端が抜けない。最初の撚る方向はZ撚り、後の撚る方向はS撚りである。実際には細いので、撚りを強くかければ、とまるが、繊維を何かに巻き取る時に外れてしまうので、撚りの方向が大切だろう。2019.12.15記
★書籍資料:ひろいのぶこ・他著、織物の原風景 樹皮と草皮の布と機


■アカソ;Boehmeria silvestrii

多年草。茎の皮の靭皮繊維を利用する。一般にはあまり丈夫でないと言う人が多い。茎が赤い。織り糸を作ったり、縄にしたり、アンギンを作るヨコ糸になる。また、糸のように細くしないで、外側の皮もついたままで使い、編みかごなどを編んだりする素材にも使う。
写真は地元でコアカソと呼ばれるもの。





●Debregeasia orientalis:ヤナギイチゴ

生育地:日本。外皮から繊維をとった。この種の仲間も東アジアに生育していて、外皮から繊維をとって利用する。


■ミヤマイラクサ; Laportea cuspidata: Laportea(ムカゴイラクサ属)

靭皮繊維をとり、糸にする。ミヤマイラクサの繊維は非常に丈夫であることから、地域によってはカラムシより好まれる。 採取の時期は冬、茎の棘が柔らかいそうだ。繊維の取りだし方はカラムシと同じ。表皮ごととり、少しの間、水につけてから、こそげとる。 ★書籍資料:野生の麻「ミヤマイラクサ」の伝承、脇田雅彦・節子著、染織アルファ―1996年186号(徳山村周辺でのミヤマイラクサの収穫や繊維の取り方について詳しい。)


■イラクサ; Urtica thunbergiana: Urtica(イラクサ属

棘があるので採る時期が限定される。皮をとって繊維を作り織物に、縄にしてかごに使う。 nettleと呼び、外皮を剥いて縄をなう。★素材ノート★『イラクサ科の植物の繊維を調べる』2012.6.30上は家の近くにあるイラクサ科の植物。高さは1mぐらいで葉はカラムシより丸い。下は外皮ごとの繊維をよったもの。外皮から外側の皮を取ることもできるが、茎の外見はカラムシと違う。葉は互生で、ミヤマイラクサのように棘は無い。ヤブマオのように葉の裏に毛は密生しない。この近くにコアカソのような植物があるが、葉が互生する。アカソの葉と比べると小さく、光沢が無い。イラクサ科の植物というのはいろいろと種類があるでしょうから、そのいろいろの中の一つかと。互生か対生で見分けると属が違うとあるので、こちらはムカゴイラクサ属となるのか。種を見分けることは困難ですが、繊維を検証することはできます。昔から繊維を見分ける方法で見慣れない植物の有用性を試してきたのだと思います。