編む植物図鑑 3

ウコギ科-オシダ科

ウコギ科

■Chengiopanax sciadophylloides

ゴンゼツ(コシアブラ):ウゴキ属)木部を薄くして経木を作り、帽子を作った。広島県の甲山地町では大正から昭和にかけて大きな産業となった。
ゴンゼツはシロ木と呼ばれ、中国地方の産地に生える。
帽子の製造方法は麦稈真田の技術を応用。紐を組んで、縫いつないでいく方法。
■資料:『甲山の経木帽子の歴史』:http://www.247hat.com/kyougi.htm

■Hedera canariensis

カナリーキヅタ、(オカメヅタとも呼ばれる)アンダーカバーに、フェンス隠しにと園芸に大活躍のこの植物は成長が早くて、すぐ繁茂するようだ。伝統的なかご作りの素材ではない


★素材ノート 『オカメヅタを編む』
2004年に調布の京王フローラルガーデンのガーデンセミナーで行ったかご作りのワークショップを使った。 ツルは当日採ってもらった大きい葉っぱがついたままの状態。ツルから葉っぱをとる作業を始めに行った。葉柄が紫できれいだが、ここは細すぎて使えない。(乾燥すると細くなりすぎて編んだ所が不安定になるため) 大量の葉を捨てたが、何か役に立たないだろうか。光沢があり色もきれいで長くて柔らかいので編むのは楽しい作業となる。
ただし、ツルは鉛筆の太さ以上ないと縮んでしまう。乾燥するとかなり痩せてしまうので、編んだ所が細くなって穴があいてしまうこともあるので、詰めぎみに編んでいく。残念ながら色艶はそのままは残らないが、自然素材としての変化だから仕方ありません。 写真はその時完成したかご。ワークショップに参加して下さった方の作品。生の素材を使うのは他にもあるが、少し乾燥させても使えると思う。しかし、まったく乾燥しきってしまうと水につけても柔軟性は無い。このような素材の場合は半分乾燥させて状態で使う。水分が抜けて細くなるのを予め、判断に入れておく。


■Hedera helix

セイヨウキヅタ。H.canariensisよりはツルがしっかりしていて扱いやすいと思う。細いものから太いものまで、柔軟性によってタテ材、ヨコ材にしてかごを編む。耐久性はそれほどではないし、商業的なかごの材料ではないが、アメリカ、イギリスでもかごの素材として知られている。



ウルシ科

多くの種類をかごの材にする。かぶれなどの心配がない種類はもちろんのこと、毒性があっても材にしている。

■Lannea spp.

アフリカ、アジアなど。食料、染料、木部の利用の他、樹皮や根の繊維を利用して縄などを作る。



■シューマック(Sumac): Rhus trilobata

南西部の北アメリカに生育。南西部のネイティブアメリカンが茎を割いてコイリングのかごなどの素材にする。
あまり、長くない枝を取り、皮を剥く。3本ぐらいに割いてコイリングのかごに使う。(2001年北アメリカ、イカリヤでアパッチ族のバスケットメーカーに見せてもらう。) 下の写真は切った枝。ニューメキシコ州で収穫した枝を切って宿舎にもって帰ってきて、割いてみた。
シューマックを始めて見た時、こんな枝のどこを使うの?というのが正直な感想だった。小枝がいっぱい出ていて短い。さっそく1本を3本に割くが、慣れないと失敗ばかり。改めてネイティブの知恵と技術に触れたような気がした。


■Toxicodendron diversilobum

北西部の北アメリカに生育。触るとかぶれる。かごの材に利用する。


■Toxicodendron trichocarpuma

ヤマウルシ;樹木をへぎ材にしてかごなどを編む。
2022年まで鉈入れかごを紹介、京都府美山町産としていたが、この材質がヤマウルシであるか、美山町で作られたかどうかも確証を得られなかった。ヤマウルシとイタヤカエデの材は見かけが似ているが薄さが違うのだろうか。写真は福島県三島町で作られていたヤマウルシのかご。
職人さんによってはヤマウルシとイタヤカエデの両方を使う人がいる。材に関しても作る人がウルシを使うという方もいて、作られたかごの材がウルシなのか、ヤマウルシなのかはっきりしない問題が残る。三島町でも以前から作っておられた方が少なくなったと10年前に聞いていて、わからないままになってしまいそうだが、もともとかごの素材というのは身近な素材を採って利用しているので、へぎ材になる樹木はなんでも利用しただろうと思う。


ウラジロ科

■コシダ;Dicranopteris linearis

弾力のある茎を使ってかごを編む。Gleichenia dichotoma(同種異名)
■編組例:四国、廣島などのコシダカゴ
■編組例:西表島のコシダカゴ
■資料URL:西表での採集の時期、場面など詳しい報告→『西表知恵の痕跡』:http://www.chie-project.jp/008/no05.html
■資料:シダ類の利用:シダ類一般の繊維、染色利用についてのウエブページ。
「草と木と花の植物誌」ーシダの民族植物誌
http://www5e.biglobe.ne.jp/~lycoris/ferns-fiber.html


■ウラジロ;Gleichenia japonica:Gleichenia(ウラジロ属)

日本など:大きく成長したウラジロの葉柄を使ってかごなどを作ると記述あり。

Gleichenia spp.: パプアニューギニア、葉柄をかごの素材にする


ウラボシ科

■ハコネソウ: Adiantum属

葉柄と羽軸で机上用ほうきを作り、その箒名を玉箒という記述があるが、玉箒については以下の解説をウエブでみつけた。 ■資料:木のぬくもり:森のぬくもり、樹げむ樹げむのTree World http://www.jugemusha.com/jumoku-zz-kouyabouki.htm

エゴノキ科

■エゴノキStyrax japonica: エゴノキ属

枝を使う。埼玉県の民具、スイノウの柄の素材。
スイノウはエゴノキを熱で曲げてスプーンのような形にし、その間をシノダケで細かくムツメを組んだもの。


オシダ科

■リョウメンシダ:Arachniodes standishii: Arachniodes(カナワラビ)属

徳山地方(岐阜)で 寝床に敷いてマットのように使った。(藤橋歴史民俗資料館)
写真は葉を乾燥させてもの。香しい良い匂いがする。


茎で縄をなってみた。リョウメンシダの茎の場合は生のまま叩いて縦方向に 割って縄になう。端から出た繊維をこすりとれば、光沢のある縄になる。 叩くというのは破壊的な行為ではあるが、どう叩くかで、適用の範囲が広がる。