編む植物図鑑 5

クズウコン科~コバノイシカグマ科

クズウコン科

■Calathea spp.

生育地:南アメリカなど。葉を使う。


■Donax arundastrum

生育地:東南アジア。サラワクで、Bemban plant, arrowroot plantと呼ぶ。マット(Iban sleeping mat)やかごの素材になる。枝を取り、外皮ごと外側を裂いて、それを細い幅に割く。光沢のある外皮は取り除き、その後、厚みを裂いて薄く、細い材を作る。これでマット、かご類を編む。ほとんどの場合、複雑なパターンを斜めに組む方法で作る。同じパターンをパンダナス、トウでも編むが、タテヨコ材で編む方法も多い。
資料:Youtube, Iban Bemban, https://www.youtube.com/watch?v=5rMljidYq0U(採取から加工、マットを組む所まで)


■Ischnosiphon spp.

生育地:南アメリカなど,茎を割いてかごを作る。


■Mrantochloa spp.

詳細は不明 葉:即席の背負いかご(ザイール)


■Schumannianthus dichotomus (Clinogyne dichotoma)

バングラディッシュなどで、長い茎を割ってマットを織る。


グネツム科


■Gnetum gnemon

生育:南アジアなど。内側の繊維は丈夫で、縄などして使う。 ■パプアニューギニア:Bilums:靭皮をよってルーピングの編み袋を編む。この植物の他、G.costatumの繊維を使うとある。(PROSEA) 足のももの所に繊維を転がして強いよりをかけて材料を作る。綯い足しながら編むというよりは長い縄を作ってから編むので結びこぶができる。


クルミ科

■Juglans mandshurica var. sachalinensis 

オニグルミ; 日本。樹皮を剥いで、かごを編む。細い枝から薄い樹皮、太い枝になると樹皮の内側、師部が厚くなる。
枝の跡が写真のように多いと樹皮がそこでやぶけてしまうこともあるが、うまく模様のように使うことで使えると思います。


■Juglans nigra

生育地:北アメリカ、木材の使用が主だが、木部でスプリント材を作る。Masonによると北カロライナの部族が樹皮の内側を割ってパターンを出すのに使うとある。


■Hicoria ovata

hickory。この種の仲間の木部をヘギ材にして北東部のアメリカインディアンがかごを作る。北アメリカのshaker, Nantucketバスケットで手などに使う。
■ウエブ資料:根、樹皮の利用について、「cordage in north America, by ron Layton」
■Masonによると内皮をCherokee族が使うとある。(American Indian Basketry, p29)


■Platycarya strobilacea sieb. et Zucc

ノグルミ;内皮から縄を作る。


■Pterocarya rhoifolia sieb. et Zucc

サワグルミ。樹皮でかご、箕を作る。(栃木県、福島県など)
■写真は2007年に福島県立博物館で行われた「樹と竹 -列島の文化 北から南から」展で行われた皮箕の実演の時の様子。製作は山内善治次氏による。
右はサワグルミの外皮で、かごを編む材料。箕よりはずっと厚みが薄い。
■資料:福島県立博物館季刊博物館だより85
http://www.general-museum.fks.ed.jp/15_quarterly/15_quarterly.htm 鈴木克彦氏による「くらしの中の樹皮」が掲載、サワクルミの箕のことや、オニグルミの繊維が水につよいことが書かれている。


クロウメモドキ科

■Ceanothus spp.

Buck Brushと呼ぶ。(この名前で複数の種類の植物をさしており、限定が無い)茎から繊維をとって縄になる。アメリカインディアンが使う植物素材。


■Berchemia racemosa

クマヤナギ。ひじょうに弾力があるツルで、太くもなる。暗緑色をしたツルは乾くと、ベイジュ色になる。 かごを編んだり、かごの口の補強に使われたりもする。 捩り編で枝をとめた箕が作られる。 ・ムチを作ったという記載があるが、確証が今のところ無い。
★素材ノート: 編む材としては硬すぎるので、ひじょうに粗い編み方で編めば使える。実用的にはかごの口縁の中に入れて補強材として使うことができる。 福島の三島町ではこのツルとよく似たクマモヅル(学名不明)をマタタビのかごの縁に入れていた。



クワ科


樹皮、靭皮繊維、木材や実など利用価値が高い。その多くが強靭な繊維を持ち、生活に使われたきた。

■Artocarpus spp.

生育地:東アジア、ハワイなど。多数の同属の木部、繊維を利用。あらゆる木製品が作られる。内皮の靭皮繊維をなって縄に、叩いて布(タパ)を作る。


■Artocarpus altilis(パンノキ):

樹皮を叩いて樹皮布を作る。


■Broussonetia kajinoki

ヒメコウゾ:内側の靭皮繊維を利用する。コウゾとして販売されていることもあり、雄花雌花が咲いて気が付く。
コウゾ同様、川沿や山端に生えていることがある。木部は他の種類同様に白いが、それほど強度は無い。細い枝は切った後なら曲げやすい。

 


■Broussonetia papyrifera

カジノキ:内側の靭皮繊維を叩いてシート状に、また糸にして縄、太布(たふ)を作った。paper mulberry
編み組みの例:
1.ハワイの事例:Broussonetiaの数種の仲間の繊維でkapaと呼ばれる樹皮布を作る。靭皮層を棒で何度か叩き、平たい布を作る。kapaと作るのにはほかの仲間、例えばイラクサ科などの植物も使われ、それぞれ特徴があった。
2.tapa(トンガ)の素材。樹皮布で同様に靭皮層を叩く。
■動画資料tapa:Youtube:Tongan Arts and Crafts: Tapa Cloth  (内容:内皮を剥いで叩き、タピオカの気根を付けた液で繋ぐ。太い木のログに巻く。このログにはあらかじめ、縄でパターンが作られている。この上に繋いだ布を置き、下のパターンをうつす。その後にペイントされる。) 落葉低木だが、高くなることもある。紙の原料の他、縄、織物(太布)も作った。
バスケタリーの場合は外皮がついていても使うことは可能なので、素材の加工も 楽だが、白い紙にする場合は皮をとる作業に手間がかかることになる。


■Broussonetia kazinoki × B. papyrifera

コウゾはカジノキ、ヒメコウゾの雑種とされる。
★素材ノート:
コウゾの皮をはがしたものが右の写真。 紙を漉くための素材も同じ工程だが、これは生の枝から剥いたもの。 一番外側の茶色の皮は薄くてもろいので、定着しないが、その下の 靭皮繊維は強い。縄をなうことも簡単にできる。枝があった場所が 多いと枝のあったところが固いので、ないにくい。


■ Ficus benghalensis

ベンガルボダイジュ. 内皮を叩いてタパを作る。


■Ficus erecta Thunb.

イヌビワ。現代ではかごの素材として使われているのを日本で見かけないが、佐賀県東名遺跡(縄文時代)から出土されたかごの素材として使われていた。 木部を薄く割りヘギ材にしている。雌株雄株があり、いちじくのような実がなる。熟すと食べられるが、たまたま食べた個体が美味しくない株だったようで、甘くはなかった。
■資料:ウエブ版の東名遺跡解説パンフレット(2017.2.1)

東名遺跡出土かごの材料でヘギ材にしたもの。黄色の材はムクロジ。


■Ficus insipida

靭皮繊維でamate paperを作る。南米。地元ではamate, wild fig とも呼ばれる。傷ついた時に出すlatexは薬用に使用。 アマテペーパーの作り方:樹皮を剥ぎ、長時間煮る。灰を入れて中和し、煮た繊維をグリッドに置き、そのグリッドが埋まるまで石で叩く。 アマテペーパーは他のFicus cotinifoliなど、Ficus属の樹皮でも作られる。


■Ficus robusta

生育地:パプワ ニューギニア。
●資料 Reite Plants: An Ethnobotanical study in Tok Pisin and English by Porer Nombo and James Leach(パプワ ニューギニアのReite村の政府代表者と人類学者が書いた地域の植物利用について。Tok Pisin語と英語の併記)では、内側の靭皮繊維を叩いて、内側の繊維を白いままで、外側をred ochreを塗るとある。Loin-cloth、ブランケットも作っていた。叩くのは木の棒のようだが、下には平らなてっぺんの厚みのある石の上で叩くようだ。


■Morus alba

トウグワ(マグワ):紙の原料にもなる。葉を養蚕に用いた。ヤマグワ同様、樹皮、繊維を利用できる。
★素材ノート:皮を剥くと白い樹液が出てべたべたしています。剥いた枝は白いのですが、時間が経つにつれて酸化し薄茶になってきます。皮は天日で乾燥させて、使う時、水につけて柔らかくします。


■Morus bombycis, M.australis

クワ(ヤマグワ):マグワ同様、樹皮をとり、編む材や紙にすることができる。


コウヤマキ科

■コウヤマキ:Sciadopitys verticillata

内皮をなって縄を作り、マキハダという木造船の浸水防止材に使う。マキハダは他にもヒノキなども使った。


コバノイシカグマ科

■ワラビ:Pteridium aquilinum

種小名は不明だが日本で食用の他、伝統的な繊維素材として使う。根から澱粉をとる。地下茎には繊維があり、縄を作る。
参考サイト:「中脇修身のHP 土佐漆喰にようこそ」:http://www.geocities.jp/tosasikkui/700.html 木舞縄に使われるワラビ縄の解説と作り方が見られる。
写真は根から取った繊維。この繊維をより合わせて縄を作る。縄は建築素材などに使用。
ワラビの茎の方は生のまま、叩いてみると、縦に割れ目が入り、細くなります。これによりをかけて、合わせれば縄になります。地下茎の縄ほど柔軟性はありませんし、耐久性も問題ですが、結わえたり、かごの材料などにもできそうです。


■Pteridium aquilinum

北米のインディアンが根をかごに使う。Masonは使う部分は根の中の2本の固く黒い縞状の組織と書いている。(American Indian Basketry, p35)この点は日本のわらびの根の繊維と同じ。