編む植物図鑑6

サトイモ科~トクサ科

サトイモ科

■Heteropsis spp.

生育地:南アメリカ。空中根をかごや家の建材を結える材にする。そのままか、縦に割いてテープ状の素材に加工する。
空中根といえども、硬い素材で家具を作る素材にもなる。
■資料 The use of Hemiepiphytes as Craft Fibres by Indigenous Communities in the Colombian Amazon by María Paula Balcázar Vargas and Tinde van Andel


■Philodendron spp.

生育地:南アメリカ。気根をかごの材にする。
観葉植物の中にこの仲間があり、気根など編む材にできるのだが、
毒性に注意。


サルノコシカケ科/ ハラタケ科など

スコットランドのバスケットメーカー、Anna Kingらがこの種のキノコから紙を作る方法を復元した。2017.2.12 他にもマッシュルームで紙を作る方法もある。
■関連の資料:Fine Paper from Mushrooms, Rice, M. 1991
■Fungi Perfecti:http://www.fungi.com/blog/items/mushroom-paper.html


サルトリイバラ科

■Smilax china

サルトリイバラ;他に、サルトリイバラ科の分類がある。
光沢があるツルはとげがある。編み材になるほど柔軟性は無いが、枝の屈曲が面白い。
■葉の使用例:葉を使って餅を包む。(四国)


シシガシラ科

■Stenochlaena palustris

東南アジアに生育。茎を編み材に使う。以下のウエブサイトでは収穫した茎の写真を見ることができる。
参考資料:FWordPress.com:https://maticph.wordpress.com/2021/03/10/diliman-hagnaya-stenochlaena-palustri/


■Woodwardia spp.

北米インディアンがかごの材に使う。数種が報告されている。Native Amerian Ethnobotay DBではW.fimbriata, W.radicans, American Indian Basketry でMasonはW.spinulosaをあげている。Masonによると茎から平らな2本の繊維層を取るとあるが、根からのまちがいか、不明。


ショウガ科

■Alpinia Speciosa K. schum./ A.zerumbet

ゲットウ(月桃)。多年生常緑草本。
薬用植物して利用されている。葉には香りがあり、食品を包むのに利用される。繊維を編んだり、紙なども作られる。
■資料:特定非営利活動法人西表島エコツーリズム協会発行の「西表島 手ざわ帖」 ③クバ、ピデ。葉を除いて、茎を叩き、乾かしながら皮を剥いでいく方法を紹介した記述がある。 2017.2.5


■Zingiber mioga

ミョウガ;葉、茎に繊維があり、そのまま乾かして編む。
■編組例:葉:ネコ(背当て)を編む(岩手県)、その他背負いかごの背負い紐。
■素材ノート:地上部がしおれる前に採取してみた。葉は比較的弱いので、葉の下の茎を剥がして乾燥させる。


■ショウガ

ミョウガと同様、葉や茎の部分をよって縄をなう。


ジンチョウゲ科

■ミツマタ: Edgeworthia chrysantha 

★素材ノート★ 写真は和紙の材料のミツマタの繊維。樹皮のうち、外皮を取った靭皮繊維の部分。この素材から、繊維をばらばらにする工程があって初めて紙をすくことができる。
この繊維の層は水につけて柔らかくすると、その繊維を指でほぐすことができる。 最初の頃、この素材を使って作品を作っていた。この繊維を伸ばして薄くし、縫い合わせた作品。斜めに繊維が走っているので、縫うことは簡単にできた。
ミツマタは枝の分岐が多く、長くは剥けないが、細い枝からも繊維はとれる。


■Lagetta Lagetto

今は生産されていないが、レース状のシートを樹皮から作った。
■資料URL:Mark NesbittによるジャマイカでのLace-bark treeについて:http://www.academia.edu/1131350/Is_Jamaican_lace-bark_Lagetta_lagetto_a_sustainable_material


■Pimelea linifolia

生育地:オーストラリア、茎の皮で縄をなう。 ●オーストラリアの南部、ビクトリア湖のBudj Bim Landscapeの先住民であるGunditjmaraがこの植物を使いうなぎ採りのかごを作る。 ウエブ資料:Aboriginal plant use in south-eastern Australia:
ウエブ資料:Bushcraft Sruvival Australia Natural Cordage part2: youtube


スイカズラ科

■Lonicera japonica

スイカズラ:honeysuckle写真は日本で。
アメリカへ輸入された。北アメリカ南西部にいるネイティブアメリカン、チェロキーなどが使ってかごを作る。もともとBuckbrush(クロウメモドキ科)のツルを使っていた、その代用で使うようになった。かごを編む方法も同様。ツルは煮て、皮を取って使う。チェロキーインディアンのバスケットメーカーは、スイカズラを日本から輸入した、といっていたのでこの種かと思う。(2001年チェロキーインディアンのバスケットメーカーからタオスで聞く)


■Lonicera spp

Lonicera ciliosa:
北米インディアンが繊維を利用するとある。建築などにも使われるとあるが、資料を探索中。2020.6.26


■Lonicera interrupta
■書籍資料:American Indian Basketry by Otis Tufton Mason,オレゴン州のKlamath族が使うとある。
■Lonicera japonica
日本、東アジアに生育。北アメリカにも持ち込まれ、ツルを使ってかごを作っている。韓国でかごを作る。

写真はLonicera属の仲間。


ススキノキ科

■Aloe vera

多様な使用がある。葉のゲルを紙のネリ材として使う。


■Hemerocallis spp.

葉の使用。縄や編み材に使う。


■Hemerocallis fulva

ヤブカンゾウ/ワスレグサ。中国、韓国、日本に生育。ヤブカンゾウとも。庭でも育てられる。ヤブカンゾウの伝統的な繊維素材としては現在使われないが、葉はそのまま縄にすると、太いものができる。さらに葉の中をこそげ取ると、細いが丈夫な縄にすることができる。また、花軸を割いて、中のスポンジ質をとると、光沢のある外皮ごとの繊維がとれる。
写真は葉を乾燥した後、縄にしたもの。


ゼンマイ科

■ゼンマイ

若葉を食用 綿毛を鞠の芯にする。綿毛:繊維を紡ぎ、着物を織った。ぜんまい紬(東北地方)
■修正事項:地下茎から縄を作ったという記述は削除しました。(2017.1.12更新)。


ソテツ科

■Cycas revta

常緑低木。葉を使って簡単な虫かごなどを作る。被り物も作る。ソテツは庭木としても植えられている。東京の民家にも大きくなっているのを見かけたことがある。 右の写真は2003年沖縄の那覇、首里城の近く。 読谷村立歴史民俗資料館には葉で作った簡単な構造の虫かごの展示があった。 虫かごにはいろいろな大きさがあるようだが、だいたいが真ん中の軸をそのままつけた葉に、交差するように別の葉を入れたもの。葉は固く、乾くともろいと思うので、生のままで作られていると思う。■資料:沖縄の玩具(http://rca.open.ed.jp/city-2002/toy/con2/tezukuri/02_2.html)


これはソテツの葉を何枚か組んで作られた帽子である(日本)。イギリスのキューガーデンの収蔵庫でも同じものを見た。2017.2.13


セリ科


■Eryngium yuccifolium

アメリカインディアンが葉を使って編んだサンダル、ロープが出土している。(Bluff shelters of the Arkansas Ozarks)


■Ferula communis

成長すると3mの高さになる。ローマ人がその茎を使って棒として使い、杖や鞭などにした。 ■資料:吉田よし子著 『香辛料の民族学』中公新書1988年出版にギリシャでの鞭としての使用の記述がある。2017.2.12


タカワラビ科

■タカワラビ:Cibotium spp.

生育地:ハワイなど。茎などの繊維を使う


タコノキ科

パンダナス(総称)

パンダナル、パンダンは、screw pineの仲間の植物の総称。
靭皮を叩いてのばし、着る物などにしたり、葉でマットやかご、根の繊維でかごなどを作る。葉:組んでマット類・かご類、バッグ、そのまま屋根を葺く材になる。履物:東南アジア(フィリッピンなど)、太平洋諸島。
果実:水に浸かったり、地面に落ちていると、端に繊維が出てくる。これを筆代わりにする。(事例:ハワイ)根:スライスして繊維にして縄をなう、など。 備考:パンダナスの種類の葉は長さがたいてい長く、巾もある。しかし葉には鋭いトゲがあるので、それをとって乾燥させテープ状にしたものを売っている。(事例:ハワイで。フィジー、タヒチ産など)
写真はハワイ島でみかけた種類。ここにもたくさん種類があるが、その中で編みに適した葉を使って屋根材、マット、ベッドシート、帆、帽子、かご類を編む。樹木はハワイ語でハラと呼ばれ、その葉はラウハラという。(pandanus tectorius)
この樹木はハワイでは捨てる所がない、と思うほど、実や根に至るまで利用していた。実は熟すとばらばらになり、下に落ちる。繊維質を活かしてカパ(樹皮布)のブラシに利用。
編組品: 1.ミクロネシアの島々で編組品が作られる。
2.トンガではタオヴァラと呼ぶ蓆状の衣類を作る。細い材に割いて斜めに組み、腰に巻く。サモアでも同様の工芸品が作られる。
3.Pandanus tectoriusなど:ハワイで帽子やかごなどの編組品が作られる。実はペイント用のブラシに
4.Pandanus boninensis:小笠原諸島の固有種、葉で編組品が作られる。
5.Pandanus aquaticus:オーストラリア、アボリジニが編組品、縄を作る。
6.マレーシアで編組品を作る。この他アフリカ、熱帯アジアでの使用がある。


★素材ノート★ 写真はラウハラを巻いたもの。ハワイのもの。これを細い幅に切って組みの材に使う。葉は樹から落ちたものを拾って集める。端の刺を取り、平らにして下のように巻いて保存している。もともとハワイ原住の人が利用していたが、その後コーヒー園で働くようになった日本人も編むようになる。ハワイ島の日系の家には大概、裏庭に1本栽培して使っていた。インドネシアでパンダンと呼ばれるパンダナスの葉。パンダナスの種類は不明。


■Pandanus boninensis warb

小笠原タコノキ;小笠原諸島の固有種。葉を組んでかご類を作る。


■Pandanus odoratissimus

アダンはいろいろなことに使われている。葉の他に重要なのは気根。薄く割いて繊維をとり縄を作り、筵の経縄やアンツクを作る。写真がそうです。
このアンツク(またはアンチク)の作り方は他の地域の捩り編の編み袋と似ているが、マチが広いのが特徴。しかも気根の縄が丈夫なので、捩り編の間隔を広く取ることが出来る。これは素材の性質の結果と使い方に則したものと思われる。弁当箱を入れて海で仕事をする時に持参したと聞いた。おそらく、捩り編を密に編めば、乾燥しにくいこともあっただろう。2017.2.14


■Pandanus tectorius

ハワイ自生。葉を使ってかごを編む。halaと呼ばれる



ツヅラフジ科

■Cocculus orbiculatus

アオツヅラフジ; 都心郊外の小さな山でも見られる。ヤマイモの葉のような形の葉だが、イモ類よりはしっかりしたツルで見分けることができる。ツルは太くなり、黒っぽい色をしている。アケビほど弾力はないが、柔らかい。かごを編む。細いツルは柔軟性に欠ける場合もあるが、年を経ると太くなり白っぽいツルで柔らかい。 このツルは海岸沿に生育するツルがあり、カツラテゴまたはカズラテゴ(新潟県)がこのツルで編むかごと思われる。細いが柔軟性があり、束にして編むことで丈夫なかごを編む。
写真はアオツヅラフジの実です。黄色くなった葉が落ちずについています。ツヅラフジと違い、日当たりのいい所に生えていました。写真は2005年11月に写したもの。 林の中ではなく生垣に生えていたものです。青い実をたくさんつけていました。実をつけている方のツルは細いこともあり、あまり強くありませんが、背景のサワラの樹の陰のほうには強いツルがありました。 ツルは細いところは緑色で、徐々に薄茶色になってきます。中間のところは緑と茶色が混ざっています。生育場所が生垣なので、あまり太くはありませんでしたが、編むのにはちょうどいい太さです。

★素材ノート:『水口細工』
滋賀県水口町の水口細工復興研究会では、メンバーで水口細工の伝統を守る活動をされている。 一度途絶えた技術を再現し、素材が何であるかも研究を重ねた結果、経材にアオツヅラフジを使うことを決定、その加工を研究してきた。 経材にアオツヅラフジ、緯材に葛の繊維が使われる。素材を確保、材に整えるまでに多大な時間がかかる。 2016年の12月にアオツヅラフジの採取に同行させていただいた。まっすぐなツルを探して歩き、その後も加工に手間がかかる。 『日本の工芸5-竹工』淡交社、1978年発行では、水口細工のことについて郷家忠臣氏が書いているが、それによると経、緯ともツヅラフジを使うとある。水口細工の緯糸は繊維のようであり、しかも白い色である。仮にツヅラフジをへぎ材のように薄くする方法で緯材が作られたのならば、水口細工の組織の見かけとは違うと考える。
ツヅラフジの細い材を使って遺跡から出たかごの復元をしたことがあるが、ツヅラフジの細い材を見つけるのが大変だった。この時は皮を剥いて使った。ひじょうに丈夫な素材ではあるが、長くて細い箇所を大量に集めるのはむつかしい。2017.2.15


写真は左から細く若い材、右が2年以上の太い材。 水口細工に使われるのは、写真のようなものでなく、まっすぐなツル。

★素材ノート:ハマカズラ(俗称)新潟県のカズラテゴを編む素材。海岸で採取する。タグチまたは、カツラとも呼ばれる種がある。アオツヅラフジかと思うが、より細く丈夫で分岐の後が多く残るツルで少し違う。2013年に関東の海岸でアオツヅラフジを採取したが、やはり見かけも違う。写真がそのかご。底がこのかごの特徴でもある。



■Sinomenium acutum

オオツヅラフジ;つる性落葉木本。 ツルがとても長く成長します。細いツルはとても柔軟なので、かごなどを編みます。 茎はしっかりした弾力がある。太い所でも鮮やかな緑色をしていて、長いのだが、鉛筆より太めのツルは弾力がありすぎ曲げるのに苦労する。
乾燥すると、黒っぽい色に変わり、表面の縦すじがはっきりする。ややカビやすいので、湿気には充分気をつけないといけないが、他のツルにない、柔軟性と丈夫さ、黒っぽい色がある。


ツノゴマ科

■Proboscidea parviflora等

デビルズ クロウ(devil's claw);(写真は薬用植物園で、種小名は不明。この中に入っている種の鞘の皮を使う。)
北アメリカに自生、南北アメリカで果実を食料、花を観賞用にするようだ。 北アメリカ南西部のネイティブは、この果実の皮を裂いてコイリングのかごの材料にする。ユッカの葉やヤナギなどの白系の巻き材とデビルスクロウの実の鞘の皮を割いたもの(黒色)をデザインに合わせて使う。また、この皮は非常に丈夫なので、かごのスタートや縁の補強にする。
以下の資料には詳しい種と北西部ネイティブなどの使い方について記述がある。
■資料:Wayne's word:(2020.6.22更新) https://www2.palomar.edu/users/warmstrong/ww0801.htm
■資料:An investigation of plant fiber for basketry by Virginia Sue M. Smith、(テキサス州の繊維素材について)によるとMartynia louisianicaの鞘を使うとある。この植物もdevil's clawと呼び、種の鞘は上記と同様の形をしている。この論文には詳しい皮の取り方が書いてある。コイリングの巻き材に使用するが、それほど長くない。明るい色の巻き材の中の黒色のアクセント材として使っているのではないだろうか。


ツルボラン科

■Dianella sandwicensis

葉を捩り編みなどの編み素材に使う。(ハワイ)


■Phormium tenax

New Zealand Flax:繊維をとって織物の糸にする。また、そのまま葉を編む。(ニュージーランド先住民族)
ロープなど 現在、観葉植物として売っているニューサイランがこれか?
★素材ノート★『ニュージーランドフラックス/ニューサイラン』
マオリ族の伝統的な有用植物。葉でかご、マット、漁網などを作る。繊維もとれる。 俗にニュージーランドフラックスと呼ばれるが、フラックスではなく、アマのような繊維があるということで名前が付けられた。フォーミウムとはギリシャ語で”かご”という意味だそうだ。
ニュージーランドの同属の植物はだいたい次の二つに分かれる。 phormium tenax,:3mぐらいの高さになる。マオリ語でharakekeという phormium cookianum tenaxよりは背が低い葉は、そのまま組んで、伝統的なかご、keteを作る他、組んで帯状にしたものなどが作られる。 葉の繊維をところどころ、削って出して乾かすと丸まるが、これをマオリの伝統的なスカートの素材にする。その他、繊維を抽出し、布やロープ類を作る。 同属には、色や大きさが違ういろいろな種類があり、園芸用にも用いられている。 繊維をとって織物の糸にする。また、そのまま葉を編む。(ニュージーランド先住民族)


ドウダイグサ科; Euphorbia

巨大になったPlaglantha属から外皮をとり、建材などに使う。
■書籍資料: マダガスカル異端植物紀行:湯浅浩史著,1995


トウヅルモドキ科;Flagellariaceae

■Flagellaria indica

トウヅルモドキ:ツルを半分や四つ割りにして編み材を作る。(沖縄)
■資料:2006年武蔵野美術大学美術館図書館民俗資料室で行われた展覧会『ばいぬかじ』でトウヅルモドキ、チガヤを使ったかごの講習があった。トウヅルモドキの材の整え方を崎原毅氏が行っている。写真の葉がついた枝がトウヅルモドキ、その左に整えた材、右側にかごがある。


トキノキ科

■Aesculus turbinata

■トキノキ;木部の利用、実の食用に、木部をくり貫き、桶のような容器(ヌキドウ)にする例がある。 おそらく各地の郷土博物館に現物がまだ残っている思われる。
■書籍資料:『あんぎんと釜神様』滝沢秀一、1990、に秋山郷の暮らしについての記述でトチノキのくりもので鉢を作った、との記述がある。。



トクサ科

■Equisetum spp.

生育地:パプワ ニューギニア。
アメリカインディアンの部族が根の表皮を裂いて、コイリングやトワイニングのかごに使う。overlayの技術が多い。




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