マタタビ科~モクレン科
マタタビ;ツルそのものには、アケビなどのツル程、柔軟性は無い。外皮を剥き、割って平たい材に加工して、かごなどを編む。
右の写真の中央に丸く見えるのはつぼみです。若いツルは赤がかった茶色でぽつぽつと白っぽい斑点があるのが特徴です。
沢がある所に多く生えているようです。葉の裏が白っぽく、他の樹木の上を覆うように生えているので遠くからでもわかります。
★素材ノート:枝を採取し、一番外側の茶系の皮とその下にある黄緑色の皮をナイフで削る。その後、半分、1/4に割って真ん中のスポンジ質をとる。割るのには、十字形に作られた道具が使われる。ナイフや手で裂いて割れるが、効率が低い。
マタタビの割った材で、いろいろな形のかごが作られる。写真はその中の平たい形の物。中心から縁に向かって数種の編み方で仕上げる。これらの技術は竹細工のそれと共通しているが、竹材と比べるとマタタビはそれほど細い材でない。
■資料URL:奥会津三島編組品振興協議会HP(2017.3.2確認)http://www.okuaizu-amikumi.jp/
■書籍資料:『森に育まれた手仕事、奥会津』、奥会津書房、1999年
サルナシ;(別名 コクワ、ニギョウ)。ツルを縄やロープとして使う。ツルを割ってへぎ材にし、箕、かごを編む。
太いツルを中心に様々な太さのツルを利用して橋などを作る。
編み組み品:
1.箕:青森県一戸町で作られる。サルナシのツルの皮、ネマガリダケ、ヤマザクラ、ヤマネコヤナギ、サクラを用いて箕を編む。
2.カンジキの輪、いかだ。
3.祖谷川にかかるかずら橋の素材がシラクチカズラ、サルナシのこと。太い材を焼いて柔らかくして使っている。
■資料:手仕事フォーラム ニギョウのカゴ、2017.3.3
http://teshigoto.jp/serial_report/kuno/vol22.html
■資料:『祖谷渓:かずら橋のサルナシの資源枯渇について考える』、神戸大学森林資源学研究室 黒田慶子さんによる報告。2017.3.3
http://www2.kobe-u.ac.jp/~kurodak/Kazura.html
マツ:木部のへぎ材、根、松葉の長いものを使ってかごを編む。
アメリカ、メキシコではPonderosa Pineの長い葉を使ってかごを編む。巻き上げや組みのかごを作る。
Ponderosa Pineは学名ではなく、数種の松の俗称。
■Tarahumara Basket
メキシコのCopper Canyonに住むTarahumara族が松葉、sotolなどの葉で作るかご。松葉のかごはたいてい二重に組まれていて、松葉の自然な色の違いを利用してパターンを出している。あじろ編みで底から組んで縁まで上がり、再び底に返るのだが、そのためかごの壁が二重になり、素材の端が隠される。かれらは小さく口がすぼんだ口の土器も作るが、同じような形のかごを作る。このようなかごは2本以上で組まれており、外側の底で組み終わる。右のかごは簡単なものだが、松葉で編まれている。
松葉を使ってコイリング(巻き上げ)のかごを作る。
ダイオウショウ;日本で手に入れらやすい長い松葉。お正月の生け花の飾りとしてよく使われる。
■素材ノート:乾燥した、または生の葉を束にしてコイリングの芯材として使う。
スプルース:Spruceと呼ぶ。北アメリカ ネイティブのかごの素材でもある。根を割いて帽子を編む。(ハイダ族)。spruceにはP.sitchensis以外にも根を利用する種類がある。この他、Larix属、Tsuga属の根も使う。
その他(Nova Scotiaなど)、樹木のスプリントの代わりにスプルースの根を割ってかごを編む。
■動画資料:Youtube:weaving spruce root basket(2020.8.28確認)
内容:(Nova Scotiaの有名なバスケットメーカーの記録動画。根の採集から加工、そしてリブタイプのかごを編むまで。)
地表近くの根を掘り出す。
北米インディアンが根などを使ったかごを編む。種小名は不明。
写真は日本で、Tsuga sieboldii。
サネカズラ;(別名ビナンカズラ)
他のツルと比べて柔らかい。樹皮から繊維を取り、縄にする。樹液から整髪料、製紙用の糊を取った。
★素材ノート:先に延びる細いツルから樹皮が採りやすい。木部は白く、樹皮は茶色。
木材が軽く船や浮きに使われる。(アフリカ) このほか、皮を編み物に使う例があるが、種類は不明。
ネムノキ:木材などを利用。
アカシア属:木部を利用。器や道具、紙を作る。タスマニアで外皮を使ってかごを編む。この樹皮はそれほど柔軟でなさそう。内皮でアボリジニが縄をなう。
Cercis(ハナズオウ属)、他の分類方法あり。アメリカ先住民族のPomo属のコイリングの素材。枝を割いて使う。赤い色を利用して模様を出す。
●資料:An investigation of fiber plant for basketry ではC.canadensisがテキサス周辺でかごの素材として使えるとしていて、枝を割ってへぎ材状にし、コイリングの巻き材に使えるとある。
●資料:plants used by the Indians of Mendocino country , California, by Victor King Chesnut, 1974,によるとカリフォルニアのインディアンが木部、外皮ともかごに使う。木部だけ、外皮のみ、という使い方と、木部を割ったものに外皮を残してトワイニングの材にすると紹介している。木部の白い色と外皮の色が二面に、または交互にあらわれることになる。
サンヘンプ:
生育地:南、熱帯アジア。インドなどで繊維を使う。茎の外皮、および中から繊維をとる。
シイノキカズラ
ツル性植物。
編組例1:西表島に産するツル性植物。皮を剥いてかごの素材にする。ただし、皮を付けて表面のでこぼこを利用するイモ洗いかごが作られる。
■資料:武蔵野美術大学民俗資料室 ばいぬかじ展2006の展示。また綱をなって夏の祖霊送りの儀式に使う。(宮古島)
民具例2:毒性を利用して魚をとる。その他、縄がわりに使う。(ミクロネシア)
ハギ:
枝を並べて垣根に、皮を剥いで縄になう。
生育地:日本では沖縄など。東南アジア、インド、オーストラリアなど。外皮、靭皮から縄などを作る。
クズ:
茎を生の状態で、または半乾燥させてかごを編む。その他、丈夫な皮を使ったり、または、内側にある靭皮繊維を取って葛不の緯糸を作る。
アメリカに緑地化政策の目的で輸入されたが、あまりにも繁茂しすぎたために、きらわれた歴史もある。しかし現在では個人のサイトでクズで編んだかごを紹介する人もいて、愛好家?がアメリカにもいそうだ。
アメリカのクズについては、「kudzu」で検索すればいろいろなサイトが出てきます。
★2019年6月追記:ラオスの編み袋もクズの繊維を撚って作っている。クズのツルから外皮を取り除き、中の繊維質のみを取り出し片撚りの糸を作る。糸はとても細く、編むときは糸端は結んでいます。
■資料:草と緑2:36-41、「クズ(Pueraria lobate Ohwi)」、伊藤操子著では、日本には、P.lobataと沖縄地方に生育するタイワンクズ(p.montana Merr.)があると書いている。
クズの加工方法:腐らせて繊維を取る方法もありますが、かごの素材にするのならいろいろ方法が他にもあります。太いクズの場合は、採ってすぐに皮を剥いて外皮、靭皮、木部に分けることができます。木部といっても柔らかく編む材料にもなりそうです。
これは2005年の7月に採取したツルからとった繊維。生えていた場所は海辺の近く。クズの根元は池の縁、水につからないぐらいのぎりぎりの場所に生えていました。太さによってはこの繊維の層が厚くとれます。
生育地:東南アジア、パプアニューギニア
靭皮繊維を使った、パプラニューギニアで、数種の用途を持つそれぞれのバッグがルーピングで作られる。
●資料 Reite Plants: An Ethnobotanical study in Tok Pisin and English by Porer Nombo and James Leach(パプワ ニューギニアのReite村の政府代表者と人類学者が書いた地域の植物利用について。Tok Pisin語と英語の併記)
生育地:地中海周辺など。この属の植物の枝をかごの素材や紐のように結ぶ時に使う。ヤナギと同じ技術と思われる。同種異名にGenista属のつくものもある。
ニセアカシア:
枝に鋭い棘があるが、外皮を編む材にできる。
岩手県で箕を作る時、ヤナギの外皮の代用となると聞いた。(2020年1月)
シロツメグサ。伝統的な繊維植物ではないものの、丈夫ではないが茎を縄にすることができる。
フジ:生育地:日本、中国など。繊維をとる。
マンサク:
2,3メートル以上の長い枝を曲げて柔らかくして、縄の代わりに用いたようだ。五箇山の家萱葺き屋根に使われている。日本民家園(川崎市)でも、その例をみた。
★素材ノート
日本民家園で萱葺き屋根の補修を公開していた。(2005年2月)
五箇山特有の合掌作り、叉首工法で仕上げれている。
丸太は藁縄、マンサクの枝で結んで組まれている。
マンサクの枝を曲げる作業の公開があった。
まず、少しずつ枝に体重を乗せて枝を曲げていきます。結構、柔らかく曲がりました。折れそうになる箇所もありますが、ぱきっとは折れません。枝が何本かに裂けますが、切れません。
曲がってきたら、先に進み体重をかけてまた曲げます。先まで曲げたら、今度はまた元に戻って、体重をかけてその先をぐるぐる回して、枝をねじります。そうするととても柔らかくなりました。(写真はねじっているところです。)
柔らかくなったら縄のように使えます。十字に重ねた丸太にまわして数回ねじってバネの力でとめます。後はマンサクの枝の端を別の材でとめるだけです。
キハダ:
繊維植物としては樹皮を使う。
北海道先住民族が舟を作った。
■素材ノート:
写真は8月の終わりに剥いた時の写真。樹皮を剥く時期としては遅く、するっとは剥けなく、外皮と内皮はひっついていたものの、外皮は剥けた。キハダは剥きやすい方だ。キハダの内皮は胃の薬の原料、鮮やかな黄色で染材としても使われる。なめると苦い味がします。
外側の皮はコルク質で軽いのですが、曲げには弱く、折れやすい。でも、テキスチャーやコルク質の手触りがよく、そのまま貼ったりして使われているようです。このキハダは高さ15メートルぐらいのものです。キハダはとても高く成長します。チェーンソーで切ってもらったのですが、その時、黄色い削りかすが空中に飛ぶのが見え、黄色い煙があがっているように見えて驚きました。
写真のように、樹皮の縦側に切れ目を入れます。
その切れ目に手を入れて、広げて、ゆっくりはがしていき、全部を剥きます。
右側が剥がした外樹皮で、左が木部です。外樹皮は剥がした時は鮮やかな黄色をしています。時間がたつと鮮やかさは無くなりますが、乾燥しても黄色味は残ります。
ちょうど、樹に小さな実がいっぱいなっていました。
■素材ノート
太い樹木だと、内皮も層に分けることができ、編む材としても使え縄も綯える。他の素材も一緒に水につけてしまうと黄色く染まる。(2020.9.19)
ホテイアオイ:
(英名ウオーターヒヤシンス)東南アジアの淡水湖に生育する多年草の水生植物。
茎を使って編んだかごやぞうりなどがバングラディッシュ、インドネシアなどで、作られている。
バングラディッシュでは繊維をとり、紙を漉く。
普通、茎の真ん中の部分が膨らんでいるが、高密度に生えると、その膨らみがなくなって、長さも1mぐらいになる、ということである。この植物については、繁茂しすぎて環境破壊につながる事例が報告されている。
茎の繊維が柔らかく編組品に使われる。写真はドライのもので、東急ハンズで2001年に販売されていた。この長さが本来編組品に使われている長さかどうかは不明。水につけるとすぐに柔らかくなる。
枝の色が赤く細い所は柔軟なのでかごを編む材に使える。 日本では伝統的な素材ではないが、北米ではred osier dogwoodと呼ぶCornus sericea Lをヤナギ枝とともにかごを編む材にする。
写真はサンゴミズキ
ミズガンピ:
枝を使ってウツボ獲りの筌を作る。(ギルバート諸島)
外皮の繊維、茎を使う。編み組み例:アメリカインディアンが道具を作る。
ヤマモミジ。木部を割ってかごを編むへぎ材を作る。
イタヤカエデ。最近のAPG植物分類体系ではムクロジ科カエデ属。比較的若い枝の木部を割ってヘギ材を作り、かごを編む。木部の色は白っぽいが、どろ染めをすると飴色に変化するが、同時に成分によって材が破壊され、今日では科学染めとなっている。(2024.3.28日修正)
秋田県角館のイタヤ細工(かご、箕やイタヤ馬、イタヤ狐などの玩具。)、他に岩手県二戸など。発火の材にした(北海道)。秋田ではイタヤで作ったかごをイタヤカツコベという。削りかけ(山形)。
■資料:滋賀県の湖北、余呉町で小原かごが作られている。大割りしたイタヤカエデの材からナイフ1本で材を取って作られる。現在もその技術の保全が続けられ、講習も行われている。2017.1.23
滋賀県の以下のウエブサイトから「聞きがき甲子園」かご作りが読める。
http://www.pref.shiga.lg.jp/d/rimmu/midori/files/23tadano.pdf
■上記小原かごの講習詳細:
ウッディパル余呉:http://woodypal.jp/ohara_kago
■資料:「民具問答集」に秋田県のイタヤカツコベ(割り方の詳細)、岩手県の例についての記録がある。
後者で、網代編みについて”二(フタ)ツハネアヅロ”という記述がみられる。2017.1.23
■素材ノート:
イタヤカエデの木部のへぎ方について:
楔を使い、粗く1/8に割り、さらに薄くする方法は昔と変わっていない。年輪に添ってさらに薄くする際、足の指や口で加えて固定し、
薄く剥ぐ。
■かご、実演などが見れる、または体験できる場所:
角館樺細工伝承館(秋田県)、滋賀県長浜市では講習を行っている。
■ウリハダカエデ;日本では本州から九州に生育。カエデ科独特のダイヤ柄の模様がある樹皮、木部を利用する。靭皮繊維が強く箕の材や蓑、縄などが作られた。木部は細工ものやヘギ材にして笠などを編む。かご、笠、縄、蓑、箕、細工もの。材を経木にしてかご、笠を作る。
■資料:滝沢修一のあんぎんと釜神様、繊維を縄にしたり、かごを編んだ。
■素材ノート:}
外皮は固いが、独特の模様があるので面白い使い方ができるだろう。その皮を取ると内皮の部分は柔らかいので自由に編める。
内皮から外皮がきれいにはがれる時期があるはず。
コハウチワカエデ:
岐阜で作られるネギ細工のへぎ材の素材になる。
素性のいい樹から薄いへぎ材がとれる。
ムクロジ:
果皮に石鹸成分がある。種を羽子板の羽根の錘にした。
現在はかごの素材として使われているのを知らないが、素性の良い樹木の木部を薄くスプリントにすることができる。
佐賀県の東名遺跡から出土した大型かご(7000年前)などに使われていたことが同定した。2011年に同素材で復元された。
■書籍資料:「さらにわかった縄文人の植物利用」新泉社2017年出版
調布の深大寺で
ベアーグラス:
北アメリカに固有な種。ネイティブのかごの素材になる。
茎と根をかごの素材にする。葉のとげを取り、柔らかい材料にしてから編むので手間がかかった。コロンビアリバーの先住民族が帽子やかごの材料にした。
名称のベアーグラスは生け花に使われる同名の植物と紛らわしいが、後者の方は日本産でカヤツリグサ科の植物。また、Tarahumara族が使うbeargrassは違う種(キジカクシ科)の植物。
■資料:Youtube:Gathering and Processing Beargrass,素材採取、乾燥まで。2017.3.20
https://www.youtube.com/watch?v=TQftKqndMek
木部の使用。スプリント材にしてかごにする。
写真は日本のF.japonica blume
生育地:北アメリカ。white ashと呼ばれる。木部からヘギ材をとる。
アオダモ:木材の利用
ヤチダモ:木部をスプリントにできる。
色の違う種がある。brown ashとも。アメリカ北部ネイティブインディアンWabanaki族の伝統的なかごの素材。木部を割り、叩いて年輪の層に分け、さらに割って紙のように薄い層までとることができる。かごに適する厚みまで割いたら、幅を調整してかごを編む。別にスイートグラスを使う。現在は様々な理由から、素材の入手が難しくなっている。大きな問題の一つに、この樹木に寄生する害虫がある。
ただし、中にはbrown ashと呼ぶ樹木とは違うのではないか、という指摘がある。私の手持ちの素材でも同じ種類とは思えないほど色が違っている。American Baskets by Robert Shawでもこの違いについての記述、特にMaineでの、が紹介されている。
■John McGuire:アメリカのバスケットメーカ、オブジェを作るアーティストでもある。彼はこの材を使って伝統的なかごを作る。ナンタケット、シェーカーのバスケットについての研究も続けていて関連書籍がある。
■Youtube資料:black ash basketmaking pounding ash:2017.3.16
https://www.youtube.com/watch?v=I58hcMWnB_0
■Youtube資料:black ash basketmaker, 2017.3.16,Mike Benedictによる素材準備の様子。
https://www.youtube.com/watch?v=UzJ--mhi2l4
■資料:Basketry of the Wabanaki Indians by Jennifer W. Nepture and Lisa K. Neuman(アメリカ、メイン大学の論文)
地中海沿岸地方、イタリアなど。例えば、枝を使ってヤナギのタテ材のかごの側面の材にする。
主に木材の利用。パプアニューギニアに生育するElmerrillia属の木部から容器やドラムを作る。
日本ではイヌツゲなど、木部の使用。種類は違うが、アメリカ先住民族はIlex属の植物の根をかごの装飾に使う。